住友生命保険はベトナム保険大手のバオベトに出資する。英大手銀行HSBCグループが保有する18%分の株式を300億円弱で買い取る。少子高齢化で国内市場の伸びが頭打ちとなるなか、東南アジアへの進出で成長の足がかりを築く。欧米勢はアジアでの資産圧縮を進めている。日本の保険会社にとっては巻き返しの好機となりそうだ。
週内に出資を正式に決める。バオベトはベトナム政府が約70%の株式を持つ国内最大手の保険グループで生損保を兼営している。2011年の保険料収入は約370億円と前年比13%増えた。住友生命は商品開発やリスク管理といった保険ノウハウも提供し、バオベトの経営を支援する。
ベトナムの人口は約8800万人で、平均年齢は20代後半と若い。人口・所得ともに増加傾向が続くと見込まれている。同国の生保業界の保険料収入は11年に約650億円と16%伸びた。
一方、日本国内の保険料等収入(民間ベース)は12年3月期で約30兆円と市場規模こそ大きいが、ここ20年間近く市場の伸びは止まっている。主力の死亡保障の減少を補ってきた貯蓄性商品も、足元の運用環境の悪化を受けて契約者に約束する利回り(予定利率)を引き下げる動きが相次いでおり、今後縮小が避けられない状況だ。保険会社は海外市場の成長力をいかに取り込むか模索している。
住友生命は05年に中国で現地の保険会社と共同出資会社を立ち上げており、ベトナムに展開すれば海外としては2カ国目となる。日本では日本生命保険が昨年、インド生保のリライアンス・ライフに出資。明治安田生命保険も今年、インドネシア生保のアブリストを持ち分法適用会社にした。第一生命保険は現在、インドネシアの中堅生保の買収に名乗りを上げている。
一方、アジアの事業展開で先行していた欧米勢は、規制の強化を受けた資産圧縮の一環でアジア事業の整理を進めている。HSBCは入札によってバオベト株の売却先を探していたほか、中国の平安保険集団の株式約15%をタイの財閥グループに売却する。オランダ保険大手のINGもマレーシア事業をアジアの保険大手AIAグループに売却した。
日本経済新聞2012年12月20日により